50代「筋肉貯金」してますか?―10年後も元気に働くために、今できること

「最近、疲れやすくなった」「階段を上ると息が切れる」「椅子から立ち上がるとき、つい机に手をついてしまう」。
50代になると、こんな小さな体の変化を感じる人が増えてきます。

例えば、こんな場面があります。

横断歩道を渡ろうとしたとき、信号が点滅し始めた。

以前なら「まだ行ける」と小走りで渡っていたのに、最近は「やめておこう」と諦めることが増えていませんか。

もちろん、安全のために無理に渡る必要はありません。
しかし、「急ごうと思っても、以前のように足が出ない」「走ること自体がおっくうになった」という変化があるとしたら、それは体からの小さなサインかもしれません。

デスクワークは想像以上に「動いていない」

特に気をつけたいのが、仕事の大半をパソコンの前で過ごしている人です。

通勤して会社に着いたら座りっぱなし。昼食後もデスクに戻り、気がつけば夕方。
忙しい日は、トイレやコピーを取りに行く程度しか歩いていないこともあります。
毎日忙しく仕事をしているから活動していると感じるかもしれませんが、身体にとってみれば、長時間ほとんど動いていない状態です。

オンライン会議が普及し、以前なら会議室まで歩いていた人も、自分のデスクで座ったまま打ち合わせができるようになりました。
便利になった一方で、私たちが日常的に体を動かす機会は確実に減っています。

筋肉も「貯金」と同じ

筋肉は、何もしなければ年齢とともに少しずつ減っていきます。

特に意識したいのが、太ももやお尻など下半身の筋肉です。
歩く、階段を上る、椅子から立つ、少し急いで移動する。
こうした日常生活の基本動作を支えているのが下半身の筋肉です。

筋肉を「貯金」に例えてみましょう。
若いうちは十分な「残高」があり、少しくらい運動不足が続いても、それほど不自由を感じないかもしれません。
しかし年齢を重ね、使う機会も減ってくると、筋肉の残高は少しずつ減っていきます。

怖いのは、その変化がゆっくり進むことです。

昨日まで上れた階段が、今日突然上れなくなるわけではありません。
「最近階段を避けるようになった」
「歩くのが遅くなった」
「小走りをしなくなった」。
そんな小さな変化の積み重ねとして現れてきます。

だからこそ50代は、10年後、20年後を元気に過ごすために「筋肉の貯金」を始めたい年代なんです。

ジムに行かなくても、貯金はできる

「運動が大切なのは分かっている。でも、忙しくて時間がない」

よく分かります。

健康のために「仕事帰りにジムへ行かなければ」「早起きして毎朝30分走らなければ」と考えると、ハードルが高くなります。

運動は実はもっと身近なところから始められます。
例えば、
・1時間座ったら一度立ち上がる。
・コピーやトイレに行くついでに少し遠回りする。
・エレベーターではなく階段を使う。
・昼休みに5〜10分歩く。
・椅子からゆっくり5回立ち上がる。

一つひとつは小さな運動です。

大切なのは、「運動する時間をつくる」だけでなく、「仕事の中に体を動かす機会をつくる」ことなんです。
デスクワークが長い人ほど、この発想が重要になります。

健康経営にも「筋肉貯金」という視点を

これは個人だけの問題ではありません。

企業にとっても、従業員が長く元気に働けることは大切です。

「健康経営」というと、健康診断やストレスチェック、食生活改善などを思い浮かべるかもしれません。
しかし、従業員が仕事中に自然と体を動かせる環境をつくることも、立派な健康づくりです。

例えば、休憩時間に軽く体を動かす習慣をつくる。
社内で階段利用を呼びかける。
長時間の会議では途中で立ち上がる時間を設ける。
朝礼で簡単なストレッチを取り入れる。

大がかりな制度を導入しなくても、できることはあります。

そして何より、経営者や管理職自身が率先して体を動かすことも、職場の雰囲気を変えるきっかけになるでしょう。

いまから、コツコツ「筋肉貯金」を始めませんか。

10年後、信号が点滅したとき

健康づくりというと、体重や健康診断の数値に目が向きがちです。

しかし、「自分の足でしっかり歩ける」「階段を上れる」「疲れにくい」「行きたい場所へ自分で行ける」ということも、とても大切な健康の指標です。

今50歳なら、10年後は60歳。20年後は70歳です。
そのときも仕事を楽しみ、旅行に出かけ、趣味を楽しみ、家族や仲間と好きな場所へ出かけられる体でいたいものです。

そして、横断歩道の信号が点滅し始めたとき。

「もう無理だから」と諦める自分ではなく、「まだ動ける」と感じられる自分でいたい。

もちろん、点滅した信号を無理に渡ることを勧めているわけではありません。
これは、将来も自分の意思で自由に動ける体を持ち続けられるか、という一つの例えです。

そのために必要なのは、特別なことではありません。

まずは今日、デスクから立ち上がって少し歩いてみる。
エレベーターではなく階段を一つ使ってみる。椅子からゆっくり5回立ち上がってみる。

そんな小さな一歩が、未来の自分への「筋肉の貯金」になります。

10年後も元気に働き、人生を楽しむために、今日から少しずつ、「筋肉貯金」を始めてみませんか。

この記事を書いた人

小林 靖
小林 靖健康経営アドバイザー
メディウェイズ代表。健康経営アドバイザー、コグニサイズインストラクターとして、企業や地域の健康づくりを支援しています。オンライン運動プログラム「ちょいトレ」の運営を通じて、誰でも無理なく続けられる健康習慣づくりをサポート。運動・認知機能向上・健康経営の視点を組み合わせ、経営者や従業員の心身の健康とパフォーマンス向上に取り組んでいます。